poem

   約束

朝の森は いちめんの露世界 シダの林は 交錯しながら 森の空気を 甘く湿らせている ざわめきはじめる シュロのハーレム わたしは ふいに立ち止まる ふかふかのブナの根元で 耳をすます やわらかな闇の向こう側から ひかりの小道が あらわれる 虹色のひかりの…

   さよならの薔薇は夜明けを待っている

もう お目にかかることは叶わない 覚悟していたけれど さよならわたしの手紙 まるで恋文みたいですねって 言ってみたけれど ポーカーフェイス これから どこへ手紙を出せばいい 虹が出るまで滝川に足浸す 誰にも相手にされなかった わたしの句 この韻文は 限…

呼吸する木があり春を待つてゐる 夢に落ちゆく一瞬の枯蓮 捌かるる鴨の覗いてゐる扉 さし色を入れたるやうにさへづれり ふと我に返りし鬼の余寒かな 限りなく空へ近づく春の雪 かれはちす 鳥の恋 鳥は 自由奔放で いいなぁ よかん 春になっても残る寒さ こと…

急ぎ足で 森を抜ける 海を見晴らす塔の下で 待ち合わせ いつも時間通りにやってくるG 彼の影は やはり尖がっている 貝殻のような螺旋階段を駆け上がれば ひかりの海 見つめあうこともなくふたりは いつまでも 海を見ていた 虹の架かる廃墟で Dを見かけた は…

素顔といふ謎のひとつを抱き聖夜 咳をしてどこからどこまでがわたし 張られたる罠に気づかず初鏡 おほかみに真向かふごとく冬ざれて わが息の白さ告ぐべきこと告げず 大寒のさるとりいばらの実の透けて 4句目 ホンマにホントに絶滅したの? ニホンオオカミ …

どうしても薔薇の実が要る極月の こんなところにレノン忌の忘れもの ふるへてゐるのは狩人の所為でなく 火を焚けば天より降りてくる梯子 シリウスや樹のこゑにとらはれてゐる 絵の中の冬のミルクを注ぐ音 New Year's Eveスペシャルupしました♪ ついに大晦日 …

たましひにふれたらきつと竜の玉 にんげんに戻る白鳥の仕草かな 山眠りをりアポロンの矢を受けて うたかたの水の底まで冬麗 冬ざれのメディチの赤き実を落とす 雪螢穹の扉の開いてゐて 読みは りゅうのたま スワン しぐさ ふゆうらら ゆきほたる そら 1句目…

旅立ちの神の揺らせる真弓の実 星流るまつりのまへのたてがみに 黄落のまんなかにゐる竜馬かな こころの奥に秋麗の森がある 秋蝶も我も光の粒となり みづうみの音のはじまる冬薔薇 読みは まゆみのみ こうらく しゅうれい ふゆそうび 1句目 Myフォトライ…

逢へるかもしれぬ花野に来てゐたり みなもとの一滴を聴く案山子かな はじめから世界の歪む花梨の実 狐の剃刀これほどの露の中 りゆうぐうのつかひの話出て無月 秋虹の歩いてゆけるところまで 読みは はなの かかし かりん きつねのかみそり むげつ 3句目 バ…

リアルな夢を見た 冷たい雨の気配 足裏の泥の感触さえ鮮やかな そうか わたし裸足なんだ 気がつくと 高いビルの屋上 観覧車が遠くに点滅している いつもの夢のエレベータで 果てしなく降りてゆく あの悲しい迷子の夢かしら 子どものように泣いている私 それ…

蜻蛉の翅ふるはせて風立ちぬ 秋麗のジャコメッティの影を踏む ふりむいてほしいこんなにまんじゅしゃげ 雁の高さから舞ひ降りる夢 鶏頭の野に放たれし男神かな 穴惑遠くまぶしい水がある 読みは 蜻蛉(とんぼう)雁(かりがね)穴惑(あなまどひ)2句目 <ジャコ…

深梅雨のこころに未知の星降らす 峯雲のひと匙削る罪と罰 万華鏡虹の生まれる音がする 黒真珠ふふむと遙かまで泳ぎ 火傷しさうな山百合の花粉かな 銀河より上がりし髪のしたたれり

深梅雨のひとときを狙って 蝉が鳴いている だけど午前中一杯だった もう雨雲に覆われて 隠れてしまう太陽 額に雨が一粒 あの夥しい空蝉の上にも きっと一粒 鳴かない蝉にも一粒 いったい世界はどうなってしまったのだろう

幾千光年待つ髪を洗ひをり 螢袋耳をすますといふことを わが闇を抜けて晩夏の蝶となる 夏茱萸を宝石函に仕舞ひませう 蟻地獄から目を離せなくなつてゐる 睡蓮の空の深さに触れてをり

ぎりぎりでやっと投句 来月から仕事がウルトラハードになるから 今のうちにと つい遊んじゃって タイトルは jellyfish 砂に埋もれて鱝の尾の見る夢は 砕かるる鏡の中を夏の蝶 田植人空を歩んでゐるやうな 草矢放ちて戯れに恋はせず メロン切るとき…