minstrel12092007-02-03

急ぎ足で 森を抜ける
海を見晴らす塔の下で 待ち合わせ
いつも時間通りにやってくるG
彼の影は やはり尖がっている
貝殻のような螺旋階段を駆け上がれば
ひかりの海
見つめあうこともなくふたりは 
いつまでも 海を見ていた




虹の架かる廃墟で Dを見かけた
はじめから歪む世界の
異次元へ繋がれた水際を
彼は 永遠に覗き込んでいる
遠く砂嵐の気配
だから わたしは足音を立てないように
そっと通り過ぎる
彼の糸杉は 黙って見送ってくれた




透明なドアを開けると
鏡の部屋には Mが待っていた
鏡という鏡に 青空が映り込んでいる
煌めきながら雲は 早送りのように流れていく
世界は夜のままでも 一向に構わない
ふたりで いつものように過ごす時間
いったい彼は 
この闇色の帽子をいくつ持っているのだろう





写真の芽は 木蓮
      モクレン
    Magnolia liliflora