さよならの薔薇は夜明けを待っている





もう お目にかかることは叶わない
覚悟していたけれど
さよなら

わたしの手紙 まるで恋文みたいですねって
言ってみたけれど ポーカーフェイス
これから どこへ手紙を出せばいい






虹が出るまで滝川に足浸す
誰にも相手にされなかった わたしの句
この韻文は 限りなく散文に近づこうと足掻いているから
そこに新しさがあるんだって
迷ってたわたしの心が 透けて見えたのかな
自分自身のスタイルのままで いいんだ
そう信じられた







告白のやうに貰ひし竜の玉
震災のあと生まれたこの句の 意味に感応してくれた
花の吉野で
まほろばの山里で
土砂降りの東京で
どこまでも甘いわたしに対して 
崩れてしまいそうなことも言われた 
悔しかった けれど ありがたかった
先生は変わらず先生だった
そのことに気づけて 良かった
そのことを伝えられて 本当に良かった







先生のドッペルゲンガー
今も あの場所にいるかしら
本人に成りすまして 電車を待っていたりするのだろうか
逢いたいけれど
先生は 苦しみから解き放たれて
いまごろ 宇宙空間を奔放に彷徨っておられるのだろう

心に浮かぶのは
独特の 照れたような深い微笑み
どこか 哀しそうだった

ありがとう
心がしんとして
まるで 海の底みたい
さよなら
ホントにかなしいとき 涙は零れない