KISS OF THE SPIDER WOMAN

 
クイーンの戸惑い






開演前 
すでに緞帳が上っている闇の舞台 そのほの昏い静けさ 
目が慣れてくると 
闇のステージには 奥行きが生まれて
なにかが存在していることに気づく 
やがて 客席は埋まり始め 
さざ波のように 舞台へとざわめきが拡がってゆく 
少し押えた昂揚感 そんな空間が好き 
わたしは緋色のシートに 深く身体を沈めて 
次にやってくる光のような瞬間を 待つ 







<蜘蛛女のキス>ブロードウェイ☆ミュージカル in 梅田 
先入観なく観たかったので 敢えて 予備知識ゼロ
真っ白な状態で 観る
シーンごとに セリフのひとつひとつが 響く
メインキャスト3人 彼らの力量は 拮抗していた
緊張と脆さと それらが絶妙に複雑に絡み合って
舞台を形創っていた 







舞台を観るとき 
まっさらな気持ちで観たいと思うのだけれど
やはり 感情は切り離せないから
今の心境で観てしまうことになる
主人公の純粋な想い どうしても そこが際立つ仕掛け
彼の気持ちを 素直に受け取ることができた気がする







prisonerという非日常的閉塞空間
そんな場所で そんな場所だから 
語られる映画の 束の間の夢
幻想の蜘蛛女 その存在のリアル
人の価値とは
死ぬとは 生きるとは 愛するとは
同じ想いで 見つめることは
奇跡にも等しいのだろうか







個々の想いを抱いてやってくる観客
最高の舞台の為に選ばれた役者
彼らを支える監督 脚本 照明 音響 裏方さん…
すべてが この一瞬の輝きに集う
ココロに余韻を残して消えてゆくステージ
いつも感じる そんな想いが
いつもより深く 感じられて
あまりに 分け入ってしまって
戸惑いながら わたしは
夕暮れの雑踏を 足早に歩いていた





王様の心配事






☆ 参考資料 ^^☆ 
ブロードウェイ・ミュージカル<蜘蛛女のキス>とは
KISS OF THE SPIDER WOMAN ラテンアメリカを代表する作家マヌエル・プイグのカルト的ベストセラー小説 プイグ自身の手による戯曲化 そして映画化を経て完成した ミュージカル版 1993年トニー賞最優秀作品賞他 計7部門を受賞 <シカゴ><キャバレー>の作詞・作曲家ジョン・カンダー&フレッド・エッブの音楽 テレンス・マクナリーの脚本によるミュージカルを翻訳上演
原作について http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya0270.html