吉野について調べ出すと 吉野を何も知らなかったことに気づく 
わたしの師は吟行するたび〝そこを詠うのではなく そこで詠め〟と仰る その季節その日その時間の空気をビビッドに感じることが重要だと また〝俳人は寡黙でなければならぬ〟とも 
このあいだドラマシティーで観た〝睡れる月〟 後南朝史に菅原孝標女の〝浜松中納言物語〟を織り込んで描いていた  野菊の群れ咲く吉野での再会を主人公は誓う そこは私の中で東吉野村のイメージ ステージに桜や藤や雪は視覚的に登場するが 野菊はひとりひとりの心の中に吹かれるのみ 

実は今とても心配なことがある 祈りただ奇跡を信じたい
   
       花充ちてゐて気がかりなことひとつ  吟遊詩人