娘が幼かった頃 思い立ってエメラルドの原石をひとつプレゼント ところどころに薄緑の光が覗く石ころ 娘の小さな掌にやっと握れるほどの 触れたら温かかった 掘り出されるまではこの惑星のピースだった鉱石 今もどこかに仕舞われている とてつもない光を匿す塊として 内に向かって輝き続けている
私が小さかった頃 天文台のある山にしばしば登った いつからか水晶山と呼ばれていた そこで見つけた小さな水晶 いくら洗っても細かい砂粒が残っていた 父の机の抽斗に入れたままの欠片 何処へいってしまったのか 
    
抽斗の奥の水晶卒業す   吟遊詩人